体験者の声を聴こう!歯科矯正中の歯磨きのしづらさと対策
歯科矯正中は、歯磨きがしづらいというイメージを持っている方が多く、実際に「歯科矯正中にうまく歯磨きできるか自信がない」といった相談も患者さんからよく寄せられます。ブラケットやワイヤーなどの矯正装置が邪魔をして、歯ブラシの毛先が隅々まで届かないという問題があるため、不安を抱えるのも無理はありません。
そこで、博多矯正歯科では矯正装置を使用している患者さんを対象に、歯磨きに関するアンケートを行いました。今回は、そのアンケート結果とともに、歯科矯正中の歯磨きのしづらさと、効果的なセルフケアの対策についてご紹介します。これから矯正を考えている方、または現在矯正治療中で歯磨きに悩んでいる方に役立つ情報をお届けします。
目次
歯科矯正中のむし歯リスク
歯科矯正中はむし歯や歯周病のリスクが高くなります。矯正装置が付いていると、食べ物のカスや歯垢がブラケットやワイヤーの周りに溜まりやすく、通常よりも注意深く歯を磨かなければならなくなるからです。特にワイヤー矯正の場合、ブラケットと歯の間やワイヤーに汚れがたまりやすく、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
矯正中にむし歯ができてしまうと、進行具合によっては治療が必要となり、場合によってはブラケットやワイヤーを一時的に外してむし歯の治療を行わなければなりません。そのため、矯正治療が長引くこともあります。こうしたリスクを軽減するためにも、日々の歯磨きは非常に重要です。
そこで、歯科矯正中の患者さんがどのように歯磨きを行っているのかを知るために、博多矯正歯科ではアンケートを行いましました。矯正中の歯磨きに不安を感じている方や、これから矯正を始める方にとって、実際の体験者の声を知ることは、治療中のセルフケアへの意識を高める一助となるでしょう。
Q.1装置を付けてから歯磨きの回数は変わりましたか?
アンケートに協力してくださった55人の患者さんのうち、「矯正装置を付けてから歯磨きの回数が増えた」と回答したのは24人でした。矯正中はむし歯や歯周病のリスクが高まるため、患者さんが歯磨きに対する意識を高めていることが伺えます。
一方で、「歯磨きの回数は変わらない」と回答したのは29人で、矯正前からすでに歯磨きに対する意識が高かったことがわかります。しかし、「最初は頑張っていたが、徐々に面倒になった」という声や、「マウスピース型矯正だから」という理由で「その他」を選んだ患者さんも2人いました。
矯正装置がついていると、ブラケットやワイヤーが障害物となり、歯磨きが難しく感じることが多いです。特にブラケットは歯に密着しているため、毛先が届かないことがあり、歯ブラシの角度を工夫する必要があります。そのため、最初は丁寧に磨いていた方も、次第に面倒に感じてしまうことがあるようです。
また、マウスピース型矯正の場合、装置の着脱が自由にできることがメリットですが、食事のたびにマウスピースを外し、歯磨きをしてから再び装着する必要があるため、その手間が歯磨きへの意識に影響を与えることも少なくありません。
Q2.歯ブラシの他にタフトブラシ・歯間ブラシ等も使いますか?
矯正装置が付いている状態で、通常の歯ブラシだけで十分に汚れを落とすことは難しいことがあります。そこで、タフトブラシや歯間ブラシなどの清掃補助器具を使うと、より効果的に汚れを除去することができます。
アンケートの結果、55人中43人が「タフトブラシや歯間ブラシを使っている」と回答しました。また、「時々使う」と答えたのが2人、「使わない」と答えたのが10人でした。
通常の歯ブラシだけでは全体の60%程度しか汚れを除去できないとされていますが、タフトブラシや歯間ブラシを併用することで、90%以上の汚れを取り除くことができると言われています。特に、ブラケットやワイヤー周辺の細かい部分には、こうした清掃補助器具が有効です。
Q3.「使う」と回答した方に質問です。どれくらいの頻度で使いますか?
タフトブラシや歯間ブラシを「毎回必ず使っている」と回答したのは8人、「1日2~3回」と答えたのは8人、「1日1回」と答えたのは24人でした。多くの患者さんが、忙しい日常の中でも少なくとも1日1回はこれらの補助器具を使ってケアを行っていることがわかります。
また、週に数回程度しか使用しないという患者さんもおり、無理なく自分のペースでケアを取り入れている様子が伺えます。タフトブラシや歯間ブラシは、使う頻度に個人差があるものの、矯正中のセルフケアには欠かせないアイテムです。
歯科矯正中のセルフケア対策は?
矯正中の歯磨きは、少しの工夫で大きな効果を得ることができます。以下のポイントを意識して、日々のセルフケアを行いましょう。
対策①歯ブラシの毛先は柔らかめ、ヘッドは小さく
矯正装置があると、通常の硬めの歯ブラシではブラケットやワイヤーに引っかかり、歯磨きがしづらいことがあります。そこで、毛先が柔らかめでヘッドが小さい歯ブラシを選ぶことで、装置周りもきれいに磨くことができます。
対策②歯ブラシの角度や持ち方を工夫しよう
歯磨きの際には、ブラシの持ち方や角度を工夫しましょう。例えば、ブラケットの周りを磨くときは、ブラシを斜めに当てて磨くことでブラケットの隙間にしっかりと毛先が届くようになります。また、ワイヤー部分を磨く際には、ブラシを横や縦に動かして、複数の角度から汚れを取り除くことが重要です。これにより、ブラケットやワイヤーに溜まりやすい食べ物のカスや歯垢を効果的に除去できます。
対策③鏡を見ながら
鏡を使い、どこを磨いているのか確認しながら歯磨きを行うことも有効な方法です。ブラケットやワイヤーがあると、目視で汚れの残りやすい箇所を把握することができます。特に奥歯や装置の周りなど、見えにくい部分は注意が必要です。鏡を見ながら磨くことで、見逃しがちな箇所をしっかりと磨く習慣がつき、磨き残しを減らすことができます。
対策④歯磨き粉は少なめ
歯磨き粉を大量に使用すると、泡立ちが多くなり、実際にどこを磨いているのか分かりにくくなることがあります。泡で口の中がいっぱいになり、短時間で「磨けた」と思ってしまうため、磨き残しが発生することもあります。そのため、歯磨き粉は少量に抑え、しっかりとブラッシングすることを心がけましょう。
対策⑤タフトブラシや歯間ブラシの併用
通常の歯ブラシでは届かない部分や、ブラケットと歯の隙間、ワイヤーの周りに溜まる汚れを除去するためには、タフトブラシや歯間ブラシの併用が欠かせません。タフトブラシは細かい部分を磨くのに適しており、歯間ブラシは歯と歯の間の汚れを効率的に取り除くことができます。これらを日常のケアに取り入れることで、歯の健康を守り、むし歯や歯周病のリスクを大幅に減らすことができます。
矯正中に使える歯磨きツールとその効果
矯正中のセルフケアをさらに向上させるためには、いくつかの特別なツールも役立ちます。
矯正専用歯ブラシ
矯正装置周りの歯垢を効果的に取り除くために開発された歯ブラシです。通常の歯ブラシに比べて、ブラシ部分がV字型にカットされており、ブラケットに引っかかることなくスムーズに磨けます。
電動歯ブラシ
電動歯ブラシは、短時間で効果的に汚れを落とすことができるため、忙しい方や手動のブラッシングが苦手な方におすすめです。振動や回転でブラケットやワイヤー周辺の細かい汚れも除去しやすくなります。
デンタルフロス(矯正用)
矯正中でも使用できるデンタルフロスは、ワイヤーの下を通して歯と歯の間を清掃できるように設計されています。通常のフロスが使いづらい場合は、このような専用のフロスを使用すると良いでしょう。また通常のフロスを通しやすくするようなツールもあります。
矯正中にむし歯の他に気を付けたいこと
矯正装置が引き起こす問題
歯科矯正中は、ブラケットやワイヤーによって歯の隅々まで磨くのが難しくなるだけでなく、歯肉への負担も増えることがあります。特に装置を装着してすぐの期間は、歯が動き始めるため歯茎が腫れやすくなり、歯肉が敏感になります。この時期に正しいセルフケアを怠ると、炎症が起きやすくなるため、より一層注意が必要です。
部分には、タフトブラシや歯間ブラシを使い、しっかりと清掃することが推奨されます。
歯磨きの際には特に優しく、丁寧に行うことが重要です。力を入れすぎると歯茎にダメージを与えることがあるため、柔らかめの歯ブラシを使用し、歯茎をマッサージするように磨くことを心がけましょう。また、食べ物が詰まりやすい
矯正中の歯肉炎予防
矯正中に気をつけたいのが、歯肉炎の予防です。矯正装置の装着により、歯肉の周囲に汚れが溜まりやすくなるため、歯肉炎が進行しやすくなります。歯肉炎が悪化すると、歯茎が腫れて痛みを伴い、さらに歯磨きが難しくなってしまいます。予防のためには、日々のブラッシングだけでなく、フッ素入りの歯磨き粉や洗口液を使って口内を清潔に保つことが効果的です。
特に、歯間ブラシやタフトブラシを使用することで、歯と歯の間や歯茎のラインに溜まったプラークを効果的に除去できるため、歯肉炎のリスクを大幅に減らすことができます。また、定期的に歯科医院でのプロフェッショナルクリーニングを受けることも、歯肉炎や歯周病の予防には欠かせません。
まとめ
矯正中のむし歯や歯周病リスクを軽減するためには、日々のセルフケアが重要な役割を果たします。特に、歯磨きが不十分であると、むし歯が進行し、矯正治療が長引く可能性があるため、しっかりとケアを行うことが矯正治療を成功させるポイントです。
今回のアンケート結果からも分かるように、多くの患者さんが矯正中の歯磨きに対して高い意識を持ち、適切なセルフケアに取り組んでいます。これから矯正治療を始める方も、安心して治療に臨むことができるよう、日々のケアをしっかりと行いましょう。矯正歯科医や衛生士にアドバイスを受けながら、自分に合ったケア方法を見つけていくことが大切です。