投稿日:2024.10.30
【舌側矯正】交叉咬合・前歯の叢生を改善したい!
こんにちは。博多矯正歯科です。
今回は裏側矯正の症例です。
症例写真として使用している口腔内の写真は全て使用許可を得ております。また、口腔内のお写真など苦手な方はご遠慮ください。
目次
〈基本情報〉
【主訴】
・叢生
・口元が出ている/口元下げたい(その他:痛み、費用、期間、見た目、治療方法)
【診断】
・上顎左右犬歯低位
・上顎左右側切歯クロスバイト
【年齢】
20代女性
【抜歯部位】
上下左右第一小臼歯
【治療期間/定期的な調整回数】
約1年9か月/21回
【費用】
¥1370000
【リスク・副作用】
歯肉退縮・歯根吸収・咬合の違和感
〈初診時所見〉
正面からの口腔内写真では前歯の叢生(上顎左右犬歯低位/上顎左右側切歯クロスバイト)が確認できます。
叢生とは歯の大きさと顎の大きさのアンバランスによって起こる重なり合った歯並びのことを示します。
原因として顎が小さいことや、歯が大きい、習癖などが挙げられます。
叢生のまま過ごしていると、歯磨きの際に細部までブラシの毛が行き届かず放置していると虫歯や歯周病の原因になります。
歯列矯正を考える問題点のひとつでもあります。
クロスバイトとは
上顎の歯が内側に、下顎の歯が外側に位置しており部分的に反対のかみ合わせになっている状態のことです。
クロスバイトは叢生としても分類されるため放っておくと虫歯や歯周病の原因になるリスクもあります。
原因として上下顎成長のアンバランスや、骨格などの遺伝などが挙げられます。
クロスバイトのまま過ごしていると虫歯や歯周病のリスクはもちろん、顎や顔にまで歪みを与えることもあります。
左右の口腔内写真を見ると、かみ合わせの位置関係は正常です。
前歯部の叢生が今回の症例にあたって一番の改善ポイントです。
また上下左右親知らずが埋伏しておりましたが、
今回は歯列矯正に影響が及ばないため一旦親知らずの抜歯はしない方向で進めます。
〈治療計画〉
【矯正装置】
舌側矯正+TADs(矯正用スクリュー)埋入
【抜歯部位】
上下左右第一小臼歯
カウンセリングの際にも患者様より矯正器具の見た目が気になるとご相談をお受けしていました。
目立たないマウスピース矯正と見えない裏側矯正で迷われていましたが、第一希望の口元を下げたいという希望をかなえるためには抜歯が必要になり、マウスピース矯正では厳しいため舌側矯正での治療を開始しました。
抜歯はすごく怖いし出来るならしたくないとのことだったのですが、口元を下げたいという意志がしっかりおありだったため上下左右第一小臼歯の計4か所を抜歯することになりました。
また抜歯したスペースを閉じる際にTADsが必要なので治療途中で埋入することもお伝えしました。
舌側矯正のほとんどの場合は上顎の正中部分に2か所矯正用スクリューを埋入します。
これら患者様と合意の上、歯列矯正を開始いたしました。
〈治療開始時〉
当院では舌側矯正の場合、上下のブラケットを別日に装着します。
こちらの患者様の場合、まず下顎からブラケットの装着を行いました。
下顎は舌があり、ブラケットの凹凸を特に感じやすいため敢えて一番奥の第二大臼歯には当初ブラケットを装着していません。
ただ臼歯部まで叢生が強い場合は初めから第二大臼歯にもブラケットを装着し、早い段階で叢生を取っていきます。
ブラケット装着してすぐは叢生があるため細いワイヤーをセットしています。
細いワイヤーでも1,2か月で変化を感じることが出来ます。
下顎左右犬歯のブラケットには叢生でワイヤーがブラケットから外れないようタイをして固定しております。
当院が使用しているブラケットは蓋により開閉できるタイプのもので簡単にワイヤーが脱離するような作りではございませんが、稀に叢生が強かったり蓋の故障などでワイヤー自体がスロットから脱離する場合がございます。
その場合は急患対応としてワイヤーの入れ直し、ブラケットが故障している場合はブラケットを新しいものにして再度セットし直します。
また下顎左右第一大臼歯の咬合面には薄く青いセメントが盛られています。
こちらはバイトアップと呼ばれているものです。
かみ合わせによって歯とブラケットが緩衝する場合にセットします。
通常上顎左右第二大臼歯の咬合面にセットするのですが、今回下顎からブラケットを装着しており、次回の上顎のブラケット装着の際に妨げになるため一時的に下顎左右第一大臼歯にセットしています。
日を改めて上顎のブラケット装着時の口腔内写真です。
上顎の前歯は特に叢生が強かったため左上犬歯にはハーフブラケットを装着しております。
ハーフブラケットは通常装着されている装置より半分の大きさのブラケットになっており、叢生が強い部分に一時的に装着されます。
叢生が取れてきたら通常使用しているサイズのブラケットを装着し直します。
またこの時点で少し歯が動いてきたのでバイトアップは外しました。
下顎左右犬歯同様、右下犬歯にもワイヤーが脱離しないようタイで固定しています。
〈ブラケット装着から半年経過〉
半年が経過し、歯列はアーチ状へと変化しました。
ワイヤー交換を重ねるだけであっという間にここまで綺麗に歯列を並べることが出来ます。
叢生の強さにもよりますが早い方で2,3か月ほど経過したのち、見た目の変化を感じたとお伝えいただくこともあります。
強い叢生がある方がアーチ状に歯を動かしていくと、ワイヤー交換中に前歯が一時的に前にあおったような傾斜が付く場合がございます。
しかし隙間を閉じる際に歯の傾斜も内に入っていくためご心配は要りません。
ワイヤー交換中には前歯の歯と歯の間に隙間ができてくる場合がございます。
抜歯部分とは別の隙間になるため、ワイヤーの形状によっては抜歯部の隙間より先にブラケットにゴムを掛けて隙間を閉じる場合がございます。
丁度半年目にはワイヤー交換が終了して抜歯部分の隙間を閉じる作業に入りました。
上顎に矯正用のスクリューを埋入し、そこにPLAS(プラス)と呼ばれる金具を装着します。
またワイヤーの上顎左右側切歯と犬歯の間にはフックをセットしてゴムを掛けるようにしています。
PLASのウイング(羽)部分とワイヤーのフックにゴムを掛けて、ゴムの力で隙間を閉じていきます。
この場合、隙間の閉じ方は後ろに下がるように動きます(口元を下げるイメージ)。
下顎はブラケットに直接ゴムかけをして隙間を閉じていきます。
またこの時バイトアップが上顎左右第二大臼歯に再セットされています。
もともと臼歯部はしっかりバイトしていたのですが、ワイヤー交換を重ねるごとに前歯部が強く緩衝しすぎて臼歯部のバイトが甘くなっていました。
そこで前歯部を圧下(歯肉方向/下向き)させるようにワイヤーを調整する間、臼歯部がしっかりバイトするようにバイトアップを一時的に再セットしました。
また上顎前歯は隙間がない状態だったため、隙間を作らないためにブラケットにタイをして固定しております。
〈ブラケット装着から約1年半経過〉
この時には隙間もすべて閉じきっており、ワイヤーを曲げて微調整を行いました。
ちなみにこちらの患者様の場合、抜歯部の隙間は約7か月で閉じ終わりました。
隙間の閉じ具合も個人差があり、早い方もいればゆっくり閉じる方もいらっしゃいます。
早く閉じ終わりたいからと、歯を指で押したりするような行為はお控えください。
〈歯列矯正終了(約1年9か月)〉
約1年9か月で裏側矯正を終えました。
治療終了時の口腔内写真では、裏側矯正の方に多く見られる歯肉の腫れが見受けられます。
裏側にブラケットがあるとどうしてもブラッシングがしづらく、それが続くと歯肉の腫れに繋がります。
ブラケットを外してすぐは腫れた状態だと思いますが、その後しっかりブラッシングを頑張っていただくことで引き締まった歯肉に戻ります。
ただ歯列矯正をした多くの患者様は無理やり歯を動かしているため歯肉退縮が起こりやすく、それはブラッシングでは改善できません。
また上顎にはTADsを外した後も残っています。
当院では何度もTADsの埋入繰り返さないように、外す際はブラケットを外すのと同じタイミングで外します。
こちらの跡は大体1週間前後で治癒していくので必要以上に舌や指で触らないようにお願いしています。
歯並びもかみ合わせの位置も上下顎の正中も綺麗な状態の歯列で終えることが出来ました。
〈まとめ〉
今回は舌側矯正の症例記事でした。
歯列矯正を始めたいけれど見た目が気になる…とお考えの方は多いです。
もちろんマウスピース矯正は目立ちにくいですが、なんといってもマウスピースの使用時間などで生活リズムが合わない方や面倒くさがりの方にとってはワイヤー矯正の舌側矯正は魅力的でしょう。
小さな歯の動きはマウスピース矯正も得意ですが、抜歯が必要になる場合はワイヤー矯正を強くお勧めします。
口元を下げたい方などは特に抜歯が必要なのでまずはお悩みをお聞かせください。
博多矯正歯科では無料のカウンセリングを行っております。
まずはお気軽に歯列のお悩みお聞かせください。