投稿日:2024.6.8
【表側矯正症例】歯の叢生(凸凹)が気になる・交叉咬合
こんにちは!福岡市博多区にある博多矯正歯科KITTE博多院です。
今回は表側矯正にて矯正治療を行った方の症例を、実際の患者様のお写真を用いて紹介していきます。
当ブログには口腔内の写真や出血部位の映り込みが一部含まれますのでご注意ください。
【主訴】上下の歯の叢生(主に前歯)
【診断】叢生・交叉咬合
【年齢】22歳女性(初診時)
【装置】表側矯正+TADs
【抜歯部位】上下左右第一小臼歯
【治療期間/定期的な調整回数】約2年3か月/27回
【費用】¥1155000
【リスク・副作用】歯肉退縮・歯根吸収・疼痛・咬合の違和感・装置の違和感
目次
【初診時】
上下の前歯にかなり叢生があり、特に右側(向かって左)2番の舌側転位と同じく右側の八重歯が目立っています。また2番が舌側に転位していることにより、上下の歯列の中心もずれてしまっています。
横から見ると上顎の前歯が唇側に傾斜しているのも分かりますね。
上下の歯列の中心のことを『正中』といい、叢生や咬み合わせに問題がある場合はこの正中にズレが生じることがあります。基本的には最終的に上下の正中ができるだけ一致するように治療計画を作成しますが、骨格に左右差があったり、上下の歯の本数が一致しないような場合は正中を完全に合わせるのは難しいです。
正中自体は多少ズレていても特に問題はないとされていますが、審美的な観点からできるだけ揃えたいという方も多くいらっしゃいます。
【治療計画】
装置:表側矯正装置+TADs
抜歯部位:上下左右4番(第一小臼歯)+下顎左右の親知らず
便宜抜歯を伴う治療では基本的に表側矯正か裏側矯正のどちらかの装置をご提案させていただいていますが、今回は患者様のご希望により表側矯正にて行うことになりました。
矯正治療において親知らずの抜歯は必ずしも必要というわけではありませんが、歯を動かすにあたって不都合であったり、既に虫歯になっているような場合は治療を始める前に予め抜歯していただくようご案内することがあります。
【表側矯正と裏側矯正のメリット・デメリット】
○表側矯正
〈メリット〉
- 比較的費用が安く治療期間が短い
- 装置が舌に当たらないため喋りにくいといった発音への影響がない
- 食事がしやすい
- 口腔内のお手入れがしやすい
〈デメリット〉
- 装置が目立つ
- 装置の厚みで口元にやや突出感が生まれる
○裏側矯正
〈メリット〉
- 装置が表側から見えない
- 虫歯になりにくい
→舌側は表側(唇側)に比べて唾液量が多いため、自浄作用や再石灰化作用(歯の表面にあるエナメル質の修復)が働きやすく虫歯になりにくいとされています。しかしその分下顎前歯舌側には歯石が沈着しやすいため、しっかりと日々の歯磨きを行う必要があります。
〈デメリット>
- 患者様ひとりひとりに合わせたオーダーメイドの装置のため費用が比較的高い
- 清掃が困難
- 舌に装置が当たるので口内炎ができやすかったり、慣れるまでは痛みや喋りにくさを感じることがある
【TADsってなに?】
矯正治療では『TADs(矯正治療用アンカースクリュー)』と呼ばれる小さな医療用ネジを顎骨に埋入して使用することがあります。主な使用目的としては、歯を効率的に動かしていくための固定源として用いられており、このTADsを使用することで治療期間の短縮や効率化、治療の幅を広げられるといった様々なメリットがあります。
TADsは抜歯を伴うような歯の移動量が多い方に使用することが多く、基本的に表側矯正では上顎の左右の歯槽骨に埋入し、裏側矯正では口蓋の正中付近に埋入を行います。歯肉の上から直接骨に埋入していくため痛みを心配される方もいらっしゃいますが、埋入の際は局所麻酔を使用するので痛みの心配はほとんど要りません。
麻酔が切れたあとの数時間は多少痛みを感じることもありますが、数日もすると痛みも落ち着き安定していきます。
TADsには小さな溝などがあるため、そこに汚れが溜まることがあります。口腔内の環境が悪かったり、TADs周辺を汚れたままにしておくとそこから炎症が起きてしまい、TADs周辺に発赤、腫脹を生じることがあるので、埋入後約1週間程度は含嗽薬による消毒やタフトブラシのような先の細い歯ブラシでの日々の清掃を心がけていただく必要があります。
また、稀にですが埋入したTADsがぐらぐらと揺れたり、脱落してしまうということもあります。原因は様々ですが骨が柔らかい方や喫煙者の方はそれ以外の方々と比較してTADsが脱落することが多いとされています。TADsが脱落してしまうときは前兆としてぐらぐらと揺れるといった症状が挙げられるため、もしこのような状態になったときは担当医に連絡をして再埋入を行う必要があります。
【装置装着時】
写真は上下とも装置を装着した直後のものになります。表側矯正では上下同時に装置を装着しますが、裏側矯正では上下別々に装置を装着していきます。
この患者様は装置を着けた日と同じ日に当院にて抜歯を行いました。
抜歯後から約4~6ヶ月程度は骨代謝が促進されることによって、歯の移動速度が速くなります。これを『RAP(局所再生促進現象)』といい、この期間を最大限活用するためにも抜歯直後~最低1週間以内に装置の装着とワイヤーのセットを完了させることが望ましいです。
当院では毎週水曜日に抜歯を行っておりますので、1日で装置装着→抜歯→ワイヤーセットまで済ませることが可能です。
写真では分かりにくいですが、右下の奥から2番目の歯の装置と上の歯がぶつかっていたため、ぶつからないようにバイトアップという咬み合わせを高くするためのプラスチックの台を上顎の一番奥の歯にセットしました。歯と装置がぶつかっていると装置が脱離したり、壊れる原因となり治療を円滑に進められなくなってしまうため、このようにバイトアップをセットする必要があります。
バイトアップをセットすると、セットした歯でしかしっかりと咬めないので前歯で食べ物を嚙み切ることが難しくなり、咀嚼に支障がでることもあります。
バイトアップが必要な期間は元々の咬み合わせの深さなど、患者様によって異なりますが、最低でも半年以上は必要になるケースがほとんどと言えるでしょう。
【半年後】
だいぶ上下の叢生が改善されたことが分かりますね!一番叢生が強かった上顎右側の2番は当初左右の歯が重なっていて装置を着けることができなかったため、治療開始から約5カ月後のある程度周囲の歯が動いた時点で装置を着けています。
また、この歯は他の歯に比べてまだ奥の方に引っ込んでいるので、手前に引っ張り出すためにメインの太いワイヤーとは別に細いワイヤーを通して歯を動かしています。
【1年後】
治療を開始してから約1年が経過しました。半年の時点では並びきっていなかった上顎右側の2番もしっかりと他の歯と並び、太いワイヤーを通してあります。
上のワイヤーの左右に2本の棒のようなものがセットされていますが、この棒から固定源であるTADsまでを半透明の『パワーチェーン』と呼ばれる輪っかが連続したようなゴムで繋ぐことで抜歯した部分の隙間を閉じていきます。写真では見えにくいですが、下の方にも隙間を閉じていくためのパワーチェーンが装置にかけられています。
隙間が閉じるスピードにはかなり個人差がありますが、大体1ヵ月に1ミリ程度とされています。隙間を閉じるフェーズでは毎月の調整の際に隙間の測定とパワーチェーンの交換を行っており、隙間の閉じ具合によってパワーチェーンの強さを変えることもあります。
また、この時点では上下の正中もずれてしまっているので、正中を合わせるために『エラスティックス』という矯正用の小さな輪ゴムのようなものを用いてゴムかけをしていただきます。
【治療終了時】
こちらは治療終了時の写真です。治療開始から約2年3か月後のものになります。
前歯部の叢生や突出感が綺麗に改善されていますね!
この方はワイヤー矯正で治療を進めていましたが、隙間が0.2~0.3ミリになったタイミングでマウスピース矯正に移行し、隙間を閉じました。このように歯の動きがあと数ミリのところで停滞してしまったような場合はマウスピースの装置の方がスムーズに隙間を閉じてくれることもあります。
まとめ
今回ご紹介させていただいた方は元々叢生量が多めの方でしたが、目立った歯肉の退縮などもなく、比較的短い期間で治療を終えることができました。
また当院では追加料金なしでワイヤー矯正からマウスピース矯正に移行できるため、治療の状況によって臨機応変に対応させていただくことが可能です。
まずは話だけでも聞いてみたい!という方は無料のカウンセリングも行っておりますので、お気軽にご相談ください。