今回は舌側矯正+マウスピース矯正にて矯正治療を行った方の症例を、実際のお写真とともに紹介していきます。
当ブログには口腔内の写真が含まれますので苦手な方はご注意ください。
(当ブログ内で使用している写真は事前に患者様に使用許可をいただいています。)
【主訴】上顎の前歯を下げたい
【診断】軽度の叢生、上顎前歯の唇側傾斜
【年齢】40代女性(初診時)
【装置】舌側矯正
【抜歯部位】非抜歯
【治療期間・定期的な調整回数】約1年8カ月/20回
【費用】¥1,375,000
【リスク・副作用】歯肉退縮・歯根吸収・疼痛・咬合の違和感・装置の違和感
全体的な歯の叢生(凹凸)はほとんどありませんが主訴にもある通り、上顎の前歯が前方に傾斜していることで突出感がみられます。また、銀歯等の補綴物が臼歯に多く入っており、歯肉退縮がみられる部位もあります。こちらの患者様は左下4-6番に『ブリッジ』と呼ばれるタイプの補綴物が入っていましたが、このままでは歯を動かすことができないため治療前にカットしていただく必要があります。
今回は元々あまり叢生がないことや、できるだけ抜歯はしたくないという患者様のご希望も踏まえて非抜歯での治療となりましたが、非抜歯での治療が可能か、抜歯が適応かどうかは検査を行ってから判断をします。
非抜歯での治療は多くの場合歯を並べるための隙間を作るために『IPR』という歯と歯の間を削るといった処置が必要になります。歯を削ると聞くと抵抗感を抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、IPRでは0.05~0.5mm程度しか削らないので多少の個人差はありますが沁みたり、虫歯のリスク上昇などに影響が出ない範囲に留めて行います。
ブリッジとは、歯を失った際に両隣の歯を削りそこに補綴物を被せることで橋を架けるような形で失った歯を補うためのものです。矯正治療ではブリッジが入っている歯を動かさない場合はそのままでも問題ありませんが、装置を着けて動かす必要がある場合は繋がっている部分をカットし、1歯ずつ動かせるようにしてから治療を開始します。
ブリッジをカットすると中央の歯がない状態になりますが、そこは矯正治療終了後にインプラントや補綴物による治療をしていただきます。
舌側矯正では基本的に下顎→上顎の順で上下に分けて装置を着けていきます。
こちらは上下着け終わった後のお写真です。
左下(画像向かって右下)は先述したようにブリッジだった部分をカットしていただいたので隙間ができていますね。この隙間の場所には最終的に補綴物をセットする予定なので隙間が閉じてしまわないよう、あえて〝バンパースリーブ〟という隙間が閉じるのを防ぐチューブをワイヤーに通しています。
またブリッジだった両隣の歯は天然歯ではなく補綴物が入っているため他の歯よりも装置が脱離しやすい傾向にあります。接着力を高めるために補綴物に小さな穴をあけたり、専用のプライマーを用いて装置を着けていますが、それでも天然歯と比べると接着力が劣るため、治療済みの歯が多い方はより一層普段のお食事に気を遣っていただく必要があります。
装置を着けてから約3か月ほど経過しましたが、初診時に比べると既に上顎前歯の傾斜が改善してきているのが分かりますね。
また全体に装置が着いてすぐは着けていなかった下顎の一番奥の歯にも装置が着きました。この部位は装置が舌に当たりやすく特にお痛みや違和感を覚えやすいため、ある程度装置に慣れた段階で装着を行います。
最初のうちはどうしても舌に当たって口内炎ができてしまったり、お痛みを感じる方が多いので慣れるまではWAX(ワックス)のような緩衝材を使用していただくのがおすすめです。
上顎の前歯の傾斜がほとんどなくなりました!今回は非抜歯での治療のため、傾斜を改善させるにあたって前歯の歯と歯の間にIPRを行っています。
また、上顎犬歯と下顎第二大臼歯(一番奥の歯)のところに半透明のボタンのようなものがついていますが、これは『顎間ゴム(ゴムかけ)』をしていただくためのものです。
顎間ゴムは医療用の小さなゴムのことを指します。主にかみ合わせの改善や歯を動かすといった用途で使用され、歯の動きを助ける補助的な役割を持っているためワイヤー矯正だけでなくマウスピース矯正でも顎間ゴムを用いることがあります。
顎間ゴムには様々なかけ方が存在しますが、患者様の歯並びやかみ合わせの状態によってそれは異なります。
顎間ゴムには大きく分けて『Ⅱ級ゴム』『Ⅲ級ゴム』『垂直ゴム』『交叉ゴム』の4つの種類があります。
上顎前突の方に用いられ、基本的には上顎犬歯と下顎第一大臼歯にゴムをかけることで上顎の歯を後方に牽引するような役割があります。
表側矯正の方の場合はブラケットに直接ゴムをかけて使用しますが、裏側矯正の方は唇側の歯面に半透明のボタンを着けることでゴムがかけられるようにします。
下顎前突や反対咬合の方に用いられます。Ⅲ級ゴムはⅡ級ゴムとは反対に、下顎の歯を後方に牽引させる力を加える必要があるので基本的には下顎犬歯と上顎第一大臼歯にゴムをかけます。
名前の通り、上下の歯に対してゴムが垂直になるようにかける方法です。こちらのゴムのかけ方は上下の歯がしっかりとかみ合っていない場合に用いられます。奥歯に使用することが多いですが、かみ合わせの状況によっては前歯部に使用することもあります。
Ⅱ、Ⅲ級ゴムに比べるとゴムのかけ方が少し複雑な場合もあるため、慣れるまでは少し大変に感じる方もいらっしゃいます。
これは『交叉咬合』といって上下の歯のかみ合う位置が頬舌側的にずれている場合に使用されます。このゴムのかけ方は一方は頬側に、もう一方は舌側にかけるため慣れるまではゴムをかける練習が必要になることもあります。
約1年が経過した状態です。この時点では歯と歯の間に小さな隙間が残っているので、その隙間を閉じるためにブラケットに『パワーチェーン』という小さな輪が連なったゴムをかけています。このパワーチェーンは顎間ゴムとは違い、1か月に1度の調整のタイミングで交換を行うため患者様による取り外しは不要です。また、パワーチェーンはカレーやコーヒーなど着色しやすい食べ物で黄ばんでしまうことがあるので見た目が気になる方は控えていただくか、調整の直前に召し上がるのがおすすめです。
左下(向かって右側)にはブラケットの間に『オープンコイル』という小さなバネが通してありますが、これは下顎の正中が上顎の正中に対しやや左にずれているため、それを可能な限り合わせるためにオープンコイルをいれています。
最後にマウスピース矯正にて微調整を行い、矯正治療終了となりました。
左下の隙間部分は補綴物にて埋める予定ですが、当院では一般診療を行っていないため紹介状をお渡しした後に治療にいっていただきます。
今回紹介させていただいている症例の治療期間や約1年8カ月ですが、その内の約半年はマウスピースでの矯正となっています。当院ではワイヤー矯正からマウスピース矯正に移行する場合の料金はいただいておりませんので、少しでもワイヤー矯正の期間を短くしたいという方におすすめです。
隙間部分の補綴治療まで終了した状態のお写真です。とても自然に仕上がっていますね!
今回の方は元からブリッジが入っていましたが、残存していた乳歯を抜歯して矯正するような場合も、乳歯は永久歯に比べてサイズが大きく、隙間を閉じきれないことが多いため、あえて隙間を残して矯正治療を進めることがあります。
※補綴等の審美治療は当院では行っておりませんので、提携の医院か近隣の医院で治療をお願い致します。
矯正治療では抜歯、非抜歯の2パターンがありますが、叢生の度合いやかみ合わせの状態によっては今回ご紹介させていただいた方のように非抜歯での治療を行えることもあります。患者様によって適応かどうかは変わりますので、矯正していけど抜歯に抵抗があるという方も一度検査を受けて見られることをおすすめします。
当院では検査の前に無料のカウンセリングを行っておりますので、まずは話だけでも!という方もお気軽にご連絡ください。
年齢層 | |
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性別 | |
主訴 | 上顎の前歯を下げたい |
治療費用 | ¥1,375,000 |
治療期間 | 約1年8か月 |
抜歯 | |
矯正の装置 | |
副作用、リスク | 歯肉退縮・歯根吸収・疼痛・咬合の違和感・装置の違和感 |
少しでも患者様にとってより良い⻭科医療を提供するため、第三者機関のNPO法人 日本⻭科医療評価機構に依頼をし、患者様の満足度調査を行っています。患者様の率直なご意見をいただき、改善すべき点は真摯に受け止めていきたいと思っています。当院には患者様の個人情報は一切伝えられませんので、是非、皆様の忌憚のないご意見をお聞かせください。
NPO法人 日本⻭科医療評価機構の調査結果は以下バナーよりご確認ください。
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